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「んー…。まぶしい…。」
カーテンの隙間から差し込む光に、私はゆっくりと目をあける。
しばらくボケーッと横になっていたが、やがて、家の中がとても静かなのに気付く。
ふと、右手を見ると宝くじが握られている。
その事実に、私は夢を見ていたのだと悟った。
私はのそのそと起き上がると、ベッドに腰掛けたまま宝くじを見つめた。
ポタ
ポタ
ポタ
涙がしたたり落ちる。
あぁ…。やっぱりあれは、あの時間は夢だったのか…。
さっきまで笑っていた父も、母も、この世にはいない…。
もう戻ることはできない、あの時間。
「…こんなもの…。いらない…。あの時間に、戻して…。」
涙がとめどなくあふれてくる。
「お金なんて、いらないっ!!!あの時間に…戻してよぉっ…!!お父さん…。お母さん…。」
まるで小さい子のように、私はわんわん泣き叫んだ。
もう二度と両親に会えない。
その事実が、私の胸に突き刺さる。
さっきまで、私の側で笑っていた両親。
あの頃は、当たり前のように私を包んでくれた家族の暖かさ。
その全てが私の胸を貫いた。
堰を切ったようにいろいろな感情があふれ出て私はそれに身を任せるように泣き続けたのだった。
両親の葬式でさえこんなに泣かなかった。
誰もいない家に、私の泣き声が響き渡っていた…。
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