第1章

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____________________________________ 桜がひらひらと舞い落ちる。 私は窓からそれを見つめていた。 「亜希子、久しぶり。」 私の部屋のドアを開けて、姉の美佳子が入ってきた。 「お姉ちゃん、どうしたの?」 「久しぶりに妹に会いにきたんじゃないの。」 そういって姉は笑う。 「それにしても、ここまで大きくなるなんてね…。正直、あの時あなたの電話には驚いたわ。数年ぶりに突然電話が来たと思ったら『児童養護施設を作ることにしたの。』だもの。どうしたのかと思ったわよ。」 「…いろいろ、考えたの…。『家族』について…。」 「…何があったのかはあえて聞かないわ。でも、私を頼ってくれて嬉しかった…。」 「お姉ちゃんにはとても感謝してる。児童養護施設を始めたところで、子育て経験のない私にとって、子供たちのお世話の仕方なんて分からないもの。お姉ちゃんの手伝いがなかったら、私はここまで頑張れなかった。」 「本当にねぇ…。子供嫌いだと思ってたあんたが、まさかこんなに良い園長先生になれるなんてね…。」 「子供が嫌いではなかったのよ。どう接していいの分からなかっただけで…。」 「ふふっ。そうね、今のあなたを見てると、とても分かる。ここの子供たちは、皆あなたのことが好きだもの。」 私は姉の言葉に、部屋の窓から外を見た。 庭で遊んでいる子供たちが、私の姿に気付くと大きく手を振る。 1億円が当選したあと、私はすぐに仕事をやめた。 そして専門学校へ通い、保育士の資格を取った。 それから保育園で数年保育士の仕事をした。 その後、実家を売り払い、そのお金と当選した1億円と貯金とで、都心を離れた郊外にこの児童養護施設を建てたのだった。
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