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私にはもう一緒に暮らせる家族はいない。
そう思うと心にぽっかりと穴が開いたようだった。
そんな私が、ふとテレビを見ると、とある県の児童養護施設の特集をしていた。
児童養護施設の数が足りず、どこの施設も子供たちでいっぱいだとその特集で言っていた。
そのときだった。
親のいない子供たちの家族になることはできないかと、ふと思ったのだった。
そう思ったらいてもたってもいられなかった。
そこから、私のなかでひとつの夢が生まれた。
身寄りのない子供たちの母になろう。
私が家族からもらった愛情を、その子達に注ごうと決心したのだった。
そして、念願の児童養護施設が完成した。
初めはいろいろあって大変だったものの、姉や地域の人たちに助けられ、こうしてついに10年目を迎えることができたのだった。
「園長先生、ちょっといいですか?」
ドアのノックの音の直後、副園長が私の部屋へと入ってきた。
副園長の顔を見たとたん、姉が驚いた顔をした。
「もしかして…彰君!?亜希子の同級生の!?」
姉の言葉に、彰はぽりぽりと頭をかく。
「はい…。お久しぶりです、お姉さん。昔と変わらずお綺麗で…」
彰の言葉に、姉はケラケラ笑いながら
「昔と変わらないわけないでしょ!もう、今年還暦よ~!」
と言ったのだった。
「でも、どうして彰君がここに?」
彰と私を交互に見ながら姉が聞いた。
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