第1章

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私にはもう一緒に暮らせる家族はいない。 そう思うと心にぽっかりと穴が開いたようだった。 そんな私が、ふとテレビを見ると、とある県の児童養護施設の特集をしていた。 児童養護施設の数が足りず、どこの施設も子供たちでいっぱいだとその特集で言っていた。 そのときだった。 親のいない子供たちの家族になることはできないかと、ふと思ったのだった。 そう思ったらいてもたってもいられなかった。 そこから、私のなかでひとつの夢が生まれた。 身寄りのない子供たちの母になろう。 私が家族からもらった愛情を、その子達に注ごうと決心したのだった。 そして、念願の児童養護施設が完成した。 初めはいろいろあって大変だったものの、姉や地域の人たちに助けられ、こうしてついに10年目を迎えることができたのだった。 「園長先生、ちょっといいですか?」 ドアのノックの音の直後、副園長が私の部屋へと入ってきた。 副園長の顔を見たとたん、姉が驚いた顔をした。 「もしかして…彰君!?亜希子の同級生の!?」 姉の言葉に、彰はぽりぽりと頭をかく。 「はい…。お久しぶりです、お姉さん。昔と変わらずお綺麗で…」 彰の言葉に、姉はケラケラ笑いながら 「昔と変わらないわけないでしょ!もう、今年還暦よ~!」 と言ったのだった。 「でも、どうして彰君がここに?」 彰と私を交互に見ながら姉が聞いた。
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