第1章

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私は、生きることの楽しさやその意味を見失っていた。。 ただただ同じ毎日を過ごしているだけだった。 30代も後半にさしかかったが、結婚をしているわけでもなく、ましてや恋人がいるわけでもなかった。 恋人がいたこともあったが、裏切られ、傷つけられ…。もう二度と、あんな想いはしたくないと、人を愛する気持ちも心の奥底にしまいこんだ。 気付けばまわりはどんどん結婚をして子供もいて…。それもあり、友人たちとも距離をおくようになっていた。 両親はそんな私を心配していたのだろうが、顔を合わすたびに彼氏はいないのか、この先一人でどうするつもりなんだと口をそろえて言ってきた。そして、あてつけるかのように姉の子達はとても可愛くて仕方ないと、娘の私に孫の自慢をしてくるのだった。 そんな両親に会うのがだんだん煩わしくなり、いつしか実家にすらほとんど寄り付かなくなってしまった。 そして数年前、両親が相次いでこの世を去った。 両親の葬式で久しぶりに10歳年上の姉に会った。 姉が結婚し、子を産んだことは知っていたが、いつのまにか子供が3人になっていた。 姉とは仲が悪いわけではないが、年が離れてるせいか子供の時から一緒に遊ぶことはほとんどなかった。 姉が進学で家を出てからというもの、たまの帰省の時に少し話す程度だった。 両親の死後、主を失った家をそのままにしておくわけにもいかず、私は再び実家に戻り、一人で暮らすことになったのだった。 職場は少し遠くなるものの、早起きすれば問題なかった。 今の職場は、大学を卒業後に入社し、ずっと勤めている。 特に趣味などもない私は、給料の大半は使い道がなく全て貯金していた。 そんなこんなで、私は実家で一人、淡々と日々を過ごしていたのだった。 そんなある日、会社の若い子達がこの近くにある宝くじ売り場であたりがよく出ると話していた。 その帰り道、若い子達の会話をふと思い出し、宝くじ売り場へ目をやった。 ちょうど今日が宝くじ販売の最終日のようで、たくさんの人が並んでいた。 いつもなら宝くじになど興味はないが、若い子達が言ってたことが本当なのか確かめてみたい気持ちになり、軽い気持ちで宝くじを購入したのだった。
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