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洗面所へ戻ると、そこにはすでに顔を洗ってる人物がいた。
「お…姉ちゃん…?」
そこには、高校生の姿の姉が顔をパシャパシャと洗っている。
私の声にふと顔をあげる。
「あら、亜希子。あんたがもう起きてるって珍しいわね。」
そういって姉は顔を拭く。
「ほら、早く顔を洗いなさい。」
姉はそういい残すと洗面所を出て行った。
いったい何がどうなっているんだろう…。
私は顔を洗おうとして、ふと違和感を感じた。
いや、さっきから微妙に感じていた違和感だったのだが、顔を洗おうとしてその違和感をしっかりと感じたのだった。
洗面台が高い…。
よくよく思い返してみると、両親も姉も、私は彼らを見上げていたのだ。
洗面台の横を見ると、見慣れた踏み台がある。
これは私が子供時に使っていた踏み台。
私はまさかと思いつつ、踏み台に乗り洗面台の鏡を覗き込んだ。
「…うそ…でしょ…?」
そこには小学校低学年の私が映っていたのだった。
私は顔を洗うのも忘れ、急いで部屋へとかけ戻った。
部屋の中を見て、再度呆然とする。
その部屋は、私が子供のとき使っていた部屋とまったく同じ装飾だった。
ベッドも、新品な勉強机も、当時のままだった。
机の上のランドセル。
私はそっと触れてみる。
まだ新しい。
あけてみると、懐かしい教科書が出てきた。
小学1年生の教科書。ぱらぱらとめくると、はじめのほうにちょこっと落書きがある。
見覚えのある落書きに、思わず笑みがこぼれる。
このころ仲良しだった絵美と一緒にふざけて教科書に落書きしたのだった。
「亜希子!!!」
突然、背後から大きな声で名前を呼ばれ、びくっとする。
振り返ると、鬼の形相の母が立っていたのだった。
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