~ 大人になるということ ~

16/17
前へ
/154ページ
次へ
翌日、朝、早めに出社する。 新事務所への初出勤。 事務所の開所日ということで、朝一番には社長や、他事務所の所長などお客様もみえ、社内行事があった。 営業として異動した私は、事務の人と一緒にお茶の用意をしていると、今日一番忙しそうな人、石田部長改め、石田所長が給湯室の入り口に居た。 「林田さん、高田さんはほっとくと事務兼任するかもよ。」 笑いながら私の手にあるコーヒーの乗ったお盆を持ち上げた。 「あっ、石田所長、私がやりますから・・・。」 事務職として異動してきた林田 明子(はやしだ あきこ)さんが恐縮して言う。 林田さんは所長よりも年上の主婦。確か、大学生と高校生の息子さんがみえると言っていた。 おっとりしているが、仕事はきっちり出来る、頼りになりそうな方。 「二人共、少し休憩しなさい。あとの二人なんて、ずっと休憩してるみたいなもんよ。」 そう言い、コーヒーを持って行ってしまった。 今のところ、新事務所は五人体制。 営業は私を含め三人。 営業リーダーとして来た、森 隆二(もり りゅうじ)さん。 営業職一筋の10年目。石田所長とは以前も一緒に仕事をしたことがあると言っていた。 もう一人は新事務所立ち上げに合わせて採用した山下 伸太郎(やました しんたろう)さん。 フリーターをしていたが、石田所長と同じ地域のオーケストラ楽団に所属していて、直接引っ張られた、と言っていた。 石田所長が社長にどれだけ期待されているのかがよく解る、The 石田 軍団だった。 それだけに、今日来ている他事務所の所長さんたちの目は厳しいものがあった。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

154人が本棚に入れています
本棚に追加