第2話

～ 泥塗り合戦 ～

「真夏に初成約ですか・・・杉浦所長って、確か新卒入社ですよね？　3、4ヶ月・・・ですかぁ・・・」

まだ私が営業になって1ヶ月が過ぎたばかり・・・そんなものなのね・・・。

「俺、そんな優秀じゃなかったぞ。夏って・・・2年目な。」

軽く笑いながらおどける杉浦所長。

えっ？！1年以上も？

「1年目の成約なんて、実力とはまた違うだろ？　だから、気にする必要ないんだよ。　早く成約した奴は、5年以内に消える確率高いよ。」

石田所長や森リーダーから何度か
『焦る必要はない』
と言われてきたが、杉浦所長のお話を聞いて、私はやっと気持ちがゆっくり持てた。

事務をしていた頃に見た営業さん達は、みんな次々と数字を作っている様にみえた。
確かに退社していく人もいた。

でも、成績と退社の関係なんて、気にしたこともなかった。

「つまり、周りはそれほど、俺らの成績に注目してないのかもよ。」

杉浦所長の部下である柳 篤志（やなぎ あつし）くんが呟く。