中古スニーカー

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中古スニーカー

 友達に付き合って古着屋に行った際、何故か急にどうしても欲しくなり、店内に飾られていたスニーカーを買った。  サイズはぴったり。ブランドものとかではないけれど品は結構な美品。なのに値段が相場の半値程。  ファッションにこだわりがある訳ではないけれど、これはかなりお買い得だと思い、すぐさま購入した。  さっそく翌日からそのスニーカーを履き出す。軽いしよく足に馴染んで、そこそこの距離を歩いてもあまり疲れを感じない。  そのせいか、ちょっとの移動の際、電車やバスを使わなくなった。それでも妙に歩き足らず、暇があるとウォーキングに出かけるようになった。  その時に、何故かいつも同じ場所を選んで通っていることに気づいた。  どっち方面に足を向けても、最終的には必ずそこを通っている。しかも最近は、散歩のコースとしてばかりではなく、まるで違う方向から家へ帰る時でさえ、遠回りをしてまでその場所を通る始末だ。  ひたすら不思議に思いながら、今日もいつの間にかその場所…住宅街の、少し見通しの悪い道を歩いていた。  どうしていつもこんな場所に来てしまうのだろう。首を傾げながら歩き続けていると、ふいに、スニーカーが生き物のように勢いをつけて前進した。引きずられて体が一緒に前へ進む。そこに、一台の車が突っ込んでくる…!!  間一髪で車をかわしたものの、俺は体勢を崩して地面に倒れた。  こっちが飛び出した形になったため、俺に罵声を浴びせながら車が走り去って行く。その光景を茫然と眺めていた俺の視界に、道の端にそっと置かれた小瓶が映った。  ゴミじゃない。明らかに意図的に置かれたものだ。  よく見ると、花が活けられていたような痕跡がある。  道端に置かれた、花の活けられた瓶…もしかしてここは。
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