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慌てて立ち上がると、俺は周囲を見回した。たまたま通りがかった人にもしかして、ここで交通事故がなかったかを聞いてみる。
案の定、あったとその人は答えてくれた。
もう五年ほど前に、近所に住んでいた高校生の男の子がここで事故死した。元々見通しが悪く、事故寸前のニアミスは多々あったが、
それ以来ここでは、大なり小なりの交通事故が頻発しているのだという。
その話を聞き、帰った後、俺は古着屋で買ったスニーカーを捨てた。
スニーカーが、事故死した高校生のものだったのかどうかは判らない。でも、あれを履いている限り、俺の足があの場所へ向くのは事実だ。そして俺が、あのスニーカーのせいで事故に遭いかけたのも事実だ。
因果関係など判らなくても不安要素は取り除いておきたい。だから俺はスニーカーを捨てた。…その筈だったのに。
ある朝、ろくろく足元も見ず靴に足を突っ込んだ瞬間、俺はその場で悲鳴を上げた。
捨てた筈のあのスニーカーが戻って来ている。そこに俺は足を突っ込みかけている。
慌てて脱ぎ、出かける途中でまた捨てたが、家に帰るとスニーカーは玄関内に戻っていた。
きっと、勝手に焼き捨ててもこいつは戻って来るんだろう。だから明日にでも、人形供養とかを引き受けている寺に持ち込もうと思っている。
でもその前に一工夫。靴ひもは全部抜いておこう。万が一明日の朝、うっかりこれを履いても出かけられないように。
中古スニーカー…完
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