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ごめん…ほんとは知っていたよ。君の命が来年まで持たないなんてこと。
君もわかっていたんだろうな…なのに、僕との約束を受け入れてくれたね。
「来年の桜の季節、また会いにくるから」
彼女の手術に必要な金は9千万…一介のフリーターに稼げる金ではない。
だけど、やるしかない。僕は無我夢中で金を集めた。汚いこともした。いっぱい人も傷つけた。
全ては…君と、僕の為に。君と、来年の桜を見るために…。
「はあ…はあっ!!」僕は無我夢中で病院に走った。余命宣告の日まで、あと1週間ある!!間に合う!!また、君と暮らせる!!笑い合える!!
病院が見えてくると、涙が溢れてきた。よく前が見えなかったが、構わずに走り抜けた。
手術が終わったら!また、桜を見に行こう!伝えたい事や話したいはいっぱいあるんだ!!
「金だ!!揃えてきた!!美幸の手術をしてくれ!早く!!」
病院の受け付けに、金をカバンごと置いて頭を下げる。「早く!!」
受付の女性が、静かに語りかけてくる。「あなた…岸本さんですか?」
通された部屋には、彼女の写真と…
花束
「…んでだよォ!!話が…話が違うじゃねぇか!!約束…したんだよ!!まだ…まだぁ…っ」
膝から崩れ落ちる。背後の医者が、鎮痛な顔で答えを吐き出す。
「急に病状が悪化して…手は尽くしましたが…ご冥福をお祈りします」
これは彼女の保険金ですー…医者が、封筒を渡してくる。中身は…一千万。
「あ…ああああ…うああああああああああああ!!」
カバンの中身と会わせて、ちょうど1億。
もはや意味を成さない大金を胸に抱いて、慟哭した。
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