金曜のあの夜とすれ違った真実

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自分の様子がおかしかったことに気づかれたくなかった。 彼の長所でもある憎めない鈍さに逆に冷静さが戻ってくる。 同世代の新入社員でも佐原さんのような女性の方がはるかにしっかりしている。 佐原さんだったら、何か勘づいたかもしれない。 2人のことを考えるうちに、急に一哉くんのことが浮かんだ。 原田くんたちより年下だとは思うけれど、実際、いくつなのだろう。 どこか不安定さの残る、少年のような甘い顔。 まさか10代、ということはないだろう。 自信がなくなって一抹の不安がよぎる。 まさか犯罪になるような年齢ではないはずだ。 ステージで歌っていた一哉くんの姿には10代にはない貫禄があった。 しかもエッチしている時だって、とても年下とは思えない。 しなやかに動く腕の筋肉のなまめかしさと汗ばんだ顔の色っぽさ…と週末のことを思い出して、頬が熱くなる。 全然、部下の話題に気持ちが集中できない。 「少し急ごうか」 相変わらず話題の豊富な原田くんを促して急ぎ足になる。 さっきの感情の波も一哉くんとの情事の記憶もすべて振り切ってしまいたかった。
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