幸せの略奪者

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カフェに入ると、一番奥のテーブル席でこちらに背を向けて座っている女性が見えた。 後ろ姿では誰なのか全く予想できない。 私が知っている人物なのかどうか、それすらも知らされずここまで来たけれど。 「麗花さん、まひろさんをお連れしましたよ」 え、れいかさんって…まさかあの"麗花"さんなの!? 女性がゆっくりと振り返って私の方を向いた。 あ…やっぱりそうだ。 「大門、麗花さん……」 私たち家族の幸せを奪った人だ。 麗花さんはちょっと目を伏せ、哀しげな笑みを見せた。 「お久し振り、まひろさん。もう10年も前に"大門"の姓ではなくなってるんだけど私。まあ、じきに"蘭"姓でもなくなるけどね」 この人は私たち家族から、父を奪ったのだ。 ………ちょっと待って。 じきに"蘭"姓ではなくなる、ですって……? 「とりあえず、座りましょうか?」 本宮先生に勧められ、麗花さんの真向かいに腰掛けた。
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