幸せの略奪者

4/9
前へ
/40ページ
次へ
目の前にいる彼女はやつれたように見える。 少なくとも幸せそうには見えないのに、それを喜べるほど私には憎しみが残っていないような気がする…。 この人は、幸せの略奪者なのに。 「可笑しいですよ、何もかもが。こうして今、私と麗花さんが向き合っていることも」 「私が言いたいのは、子供のことよ。あの時は私も広美さんも妊娠中だった。広美さんが産んだ子供は10歳よね?私の子供は……産まれることはなかったわ」 それは確かにそうだけど、正直言って私には関係ないこと。 麗花さんが妊娠していたのは知ってたけど、その子供について何かを知ろうとは思わなかった。 「嘘だったんですか?本当は赤ちゃんできたって嘘……」 「嘘なんかじゃないわ!!」 ビクッとした。 突然血相を変えて立ち上がり、怒鳴った麗花さんは私を上から睨み付けていた。 「麗花さん落ち着いて…とりあえず座ろう。蘭さん、彼女をあまり興奮させないでもらえますか。ここは大人の話し合いってことで…。冷静にお願いします」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加