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私はただ黙って彼の言葉を待った。
「兄は佐伯家の長男です。離れて暮らしてきましたが、長男だということに変わりはありません。親父が亡くなってから私が会社を継ぎましたが、本当は兄こそが継ぐべきだったと思うのです。だから貴女からも兄を説得してもらえませんか……?」
「え!?私が佐伯主任を説得……?」
S・Factoryが弟さんの会社だと今日知ったばかりなのに、説得?
そんなこと私にできる!?
「あの…。あまりにも突然で私かなり混乱してます…。そんな大それたこと、できるかどうか分かりません……」
佐伯主任はまだ知らないはず。
私が今日ここで弟さんと会っていることも、こんな重要な会話をしているなんてことも。
まず何から話したらいいのかすら分からないというのに。
だって、それより何より私が気になって仕方ないのは、あの女性のこと。
思い出さないように、考えないようにしていたのに…。
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