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「そういう事情も含めて説明さしあげますから、早く出発しなさいませ」リオガが銃で芽衣の肩を叩く。「思い切り空へ飛ぶのです。サトウメイの体が吹き飛ぶ前に」
「分かったわよ。行きゃいいんでしょ、行きゃ」
このままだと本当に殺されかねない。従うしかないのだ。
腹をくくった芽衣は操縦桿を握った。途端にコントロールパネルに色とりどりの光が灯り、様々な計器類が見え、ウィンドウの周りから前方に光が指して、見たこともない文字が映しだされた。
「すっご……」
「リオガ様。危ないので何かに掴まっていてください。サトウメイ、いつでも出られるぞ」
リオガが操縦席のシートへしがみついたのを見て、芽衣は右のペダルをゆっくりと踏んだ。
水の抵抗など全く感じず、まるで水中を切るようにして飛行機が進んでいく。
「うっわ、速!」
「よし、次は浮上しろ! 引け!」
両方の操縦桿を手前に倒す。すると、すぐに背中へと重力がかかり機体が上昇していった。浮上なんて生易しいものではない。海の中をものすごい勢いで上って行き、海面を突き破るようにして空へと飛び出した。
「なあああによおお、これえええええ!」
体が押しつぶされそうになる。重力だ。緊張とパニックで体が強張る。目の前に迫ってきたのは、ジャンボジェットだった。
「お、おい! 避けろ!」
操縦桿を思い切り左に曲げ、間一髪でその大きな機体をかすめる。いつの間にか雲を突き抜けていた。このままだと宇宙まで行きかねない。怖くなって、今度は操縦桿を前に倒す。すると、今度は髪の毛が逆立つような感覚で急降下していった。
背後でリオガが背もたれにしがみつきながら芽衣の頭を叩く。
「何をやっているんですのおおお!」
「んなこと言ったってえええ!」
海が間近に迫ってきた。今度はゆっくりと操縦桿を手前に引き、機体を水平に保つ。何とかスピード感が掴めたような気がした。それにしても早過ぎる。マッハいくつで飛んでいるのだろう。
「熱源2! 左へ!」
クレイドアムフの声に、芽衣が操縦桿を左に倒す。
転瞬、目の前をレーザーのような光が二筋通ったのが見えた。
「なっ、何っ!」
「識別確認、アンバー人だ! ここまで追ってくるとは……! サトウメイ、当たるなよ!」
「何よ、アンバー人って!」
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