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前面下部にある後方確認用のエリアに二機の戦闘機が見える。真っ黒で三角形をしたフォルムは地球のものではないように見えた。
「来る!」
「うひゃあ!」
危険を感じて今度は右に飛ぶと、レーザーが機体をかすめるようにして放たれたのが見えた。
富士山が大きく見えてくる。
一機がスピードを上げて左から回り込んできた。右に行った機体が短いレーザーを撃ってくる。
挟み撃ちだ。このままでは――、
「くぬやろー!」
今度は急上昇して避けた。
攻撃していた二機がすんでのところで交差し、大きく円を描くようにしてまたこちらへと向かってくる。
「ねえ! 何か武器はないわけ!?」
「武装解除されているのだ! ……また来るぞ!」
今度は下からレーザーが目の前を空へ突き抜けていった。さらに追尾式のミサイルが十発ほど飛んで来る。
「アンバー人め、あんなものを大気圏内で……!」
「サトウメイ! 避けるのです!」右へ大きく急旋回して一発、二発とやり過ごす。「相手が何者かきちんと判明するまでは、一切の武器の使用を禁じますわ!」
「何よそれ!」
残り三発も機体を大きくそれて飛んでいった。
「避けるのが上手なのでしょう!? 逃げおおせるのです!」
無茶ばかり言う。
しかし――芽衣は、自分が明らかに興奮しているのを全身で感じていた。
実際に弾を避けたからだ。自分は今、リアルでシューティングゲームをやっている。
そう思った瞬間に頭が切り替わった。
冷静になる。
相手のほうが速い。このまま振りきれるわけはないだろう。だとしたらどうするか。
芽衣はニヤリと笑った。
「きゃあああ!」
「無茶な!」
芽衣は歯を食いしばりながら、左に大きく急旋回した。
一機を後ろに引き連れて逃げるようにして思い切りペダルを踏み込み、スピードを上げていく。
また背後から攻撃されたのを左右に振って避けた。
挑発するように蛇行していると、レーザーが機体のどこかをかすって大きく揺れた。
「へ、下手じゃありませんの!」
「うっさい!」
反論している暇はない。足の裏が痛むほどペダルを踏む。機体が震えだした。
「い、痛い! それ以上スピードを出したら機体がもたないぞ!」
「ここで死ぬよりマシでしょ!」
「何をなさるおつもりですか!」
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