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体の骨がみしみし言うのが伝わってきた。歯を食いしばる。今度は前方の右から来る一機が視界に入った。そちらへ向かってペダルをベタ踏みする。
「このコースじゃ……ぶつかるぞ……!」
「きゃあああ!」
後ろでリオガが金切り声を上げた。
黒い機体の側面が見えてくる。あと三秒。二秒。一秒。そこで芽衣は操縦桿を思い切り手前に引いた。
機体が急上昇する。
そして――、
「う……お……っ!」
背後から爆発音が聞こえてきた。ウィンドウには、二機が衝突した後の火球と煙が見え、そこから機体の破片が落ちていく姿が映っていた。
「は……はは……」
自分でも信じられない。だけど、うまくいった。
芽衣がペダルからゆっくりと足を離すと、スピードが下がっていき、機体が上げていた悲鳴も収まっていく。
「……あなた、まさか今のを狙って……?」
「無茶をさせる。リオガ様。お怪我はありませんか?」
「私は大丈夫ですわ。それより……サトウメイ。やはり私の目に狂いはなかったということですわね」
リオガが操縦席から離れて床へへたりこみながら、芽衣の右腕を撫でた。
呑気なものだ。芽衣はまだ心臓がバクバク言っているのが収まらないと言うのに。
すると、間髪いれずウィンドウに赤い文字が表示される。
「サトウメイ、後方から識別不明機が来るぞ。えらい低速だ」
ウィンドウの下部に目を向けると、そこに映っていたのは灰色のボディと両翼に赤い丸が見える――F15イーグルだった。
はっとして下を見る。いつの間にか東京湾に戻ってきていた。
「ちょっ。自衛隊の戦闘機じゃないの、アレ。どうすんの。どこに行けばいいの? アメリカ?」
「どうやら地元の軍に気づかれたようだ。早々に脱出する必要があるな」
「あたしたち領空侵犯してるってことでしょ? 勢いで撃墜されたらどうすんの」
芽衣の訴えにリオガが笑う。
「あの程度の戦闘機では追いつくことすらできませんわ。さ、クレイドアムフ。行くべき道を示してくださいませ」
「はっ」
すぐにウィンドウの表示内容が書き換わる。向かうべき先を示す方向が線で表示された。上を向いている。
「サトウメイ。これに従って飛ぶのだ」
「えーと、その……空指してるけど」
「そうですわ」リオガがディスプレイを指差す。「ほら、攻撃されましたわよ。さ、早く飛びなさいませ」
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