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F15からミサイルが発射された。それを見て芽衣が慌ててペダルを踏み込み、操縦桿を手前に引く。ぐんぐんと上昇していく機体。また重力がかかり、呼吸すら辛くなってくる。
意識が飛びそうになり一瞬だけ視界がブラックアウトして気づくと――大気圏を抜け、宇宙へ出ていた。
「うっそ……」
目の前には暗闇が広がっている。
見えたのは、太陽に照らされて輝く月だった。すぐに目が慣れて、その背景を彩るような星の海が横たわっている光景が、ウィンドウを通じて芽衣の瞳に映っていた。
綺麗だ。その景色に、芽衣は圧倒されていた。心なしか体も軽くなった気がする。そうだ。ここは宇宙。つまり今は無重力の空間にいるということなのだ。
「ちょっ、宇宙! 行き過ぎた! どんだけ性能いいのよ!」
振り返ってリオガを見る。彼女はひどく落ち着いていた。
「サトウメイ、落ち着きなさい。方向は合ってるのですよ」
「え? どういうことなの? あんたたち何者なわけ? NASAの人? それともJAXA?」
「ほら、よそ見をしない。ぶつかりますわよ」
ウィンドウを見ると、そこには灰色の惑星が一面に映っていた。クレーターのあるぼこぼこした表面は間違いなく月だ。
「うわお!」
思い切り操縦桿を右に倒して月を避ける。芽衣は目を見開きながら、側面を流れていく月を見ていた。
「ほ……本当にどこへ行こうっての?」
秋葉原で拉致され東京湾へ行ったらその水中に潜り、気がつけば東京の上空で見知らぬ敵とドッグファイトを繰り広げた後に宇宙へと出てしまった。こんなおかしなことはない。
「ねえ、どこへ行こうっての? これって本当にリアル? 何なの、一体」
振り返って質問してくる芽衣に、仕方ないといった顔でリオガが口を開いた。
「まずはモーラ星系にあるクムハチット連合へ、そののちセアン星系に戻ってタイスへ私を送り届けてくださいませ」
聞いたこともない単語が出てきて、芽衣の頭は一気に混乱した。
「えーと……念のため聞いとくけど、それって地球じゃないどこかの星ってことなの? 宇宙に出ちゃったってことは、そういうことなのよね?」
「当たり前じゃないですの。何の用もないのに宇宙に出る必要はありませんもの」
「いや、そりゃそうかもって思ってたけどさ、宇宙なのよ? 何で日本語分かんの?」
「質問はゆっくりでお願いしますわ。それに、まずは前を見て操縦してくださいませ」
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