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「まあ、海流に乗るまで時間はあるでしょうし、眠くなってしまいますものね。説明さしあげましょう。その代わり操縦には気をつけてくださいませ。さもないと――」
「はいはい、頭を爆破するって言うんでしょ。分かったわよ。んで、リオガはどこの誰なわけ?」
こほんとリオガが咳払いする。そして芽衣を見つめながら口を開いた。
「実はですね……私はあの星の生命体ではないのですよ」
そのドヤ顔に、芽衣は困惑した。
「え、あ、う、うん。知ってた」
「え……本当ですの? 漂着して見つけたお店のような場所で、ドーハン人の女性に見えるよう変装したのですが」
と、白いドレスを改めて見ながら首を傾げる。
「あんたが着てんのはウェディングドレスっつってね。結婚式っていう特別な儀式の時に着るヤツなのよ」
「結婚式、ですか……」
リオガが顔を赤らめる。
「そもそも、この地球……あんたたちがドーハンって呼んでるこの星には、こんなところまで来れる飛行機はないのよ」
「それも訂正させてもらう」船内に声が響く。「私はただの飛行機ではなく惑星間航行船だ。あんなおもちゃと一緒にしてくれるな。馬鹿にするのも大概にしろ」
「いや、別にそういうつもりじゃ……」
ああ、もう一向に話が進まない。
「そうですわ。クレイドアムフはウィザー第一宙域防衛軍旗艦、ア・シューイド・イスモの元メインコントローラーでしたの。お父様が指揮していた時のあなたのその姿、それは勇壮そのものでしたわ」
「ありがとうございます、リオガ様。ジャルヒン様もきっと星の海で喜ばれているかと……」
「そうですわね。その海が不幸な惑星間戦争によって今や汚されようとしているのです。それをこの私が何としても食い止めねばなりません。そのためには……クレイドアムフ。協力してくださいますわね?」
「もちろんです。このクレイドアムフ。例え両翼がちぎられ制御不能になろうとも、必ずリオガ様をタイスへ和平の使者としてお連れいたします」
「ええ、頼みましたわ。全ウィザー人の希望を保ち、命を明日へつなげるため頑張りましょう」
「はっ!」
一芝居が終わって静かになった船内。
芽衣はジト目でリオガと船内にあるスピーカーらしき場所を交互に見やった。
「……下手な芝居はいいから。早く質問に答えなさいよ。まずリオガ、あんたは何者なわけ?」
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