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ハシゴ先の飲み屋を探しているサラリーマンの集団や、グッズ片手に語り合っている学生たち、これから同伴出勤するようなフリフリのドレスを来た女の子と中年の男。
そんな人々の間をかいくぐって芽衣が入ったのは、駅から近い場所にあるゲームセンターのビルだった。
一階にあるプリクラやクレーンゲームを横目に、エスカレーターで上の階へ向かう。メダルゲーム、格闘ゲーム、カードゲームのフロアを抜けて芽衣がたどり着いたのは、オンライン対戦のテーブルゲームがひしめくエリア。
しかし、彼女の目的はその隅に置かれている数台のシューティングゲームだった。
ちらほらと向けられてくる「女だ」の視線を受けながら、芽衣はお気に入りの筐体を見つけてその椅子に腰を下ろす。ブランド物のバッグを隣の椅子に置き、スカートから伸びる足をやや見せつけるようにして組むと、財布から百円玉を投入してゲームをスタートさせた。
プレイしたのは、縦スクロールタイプのゲームだ。レバーで自機となる戦闘機を操作して、様々な種類の弾や敵を全滅させるボムを駆使しながら進んでいき、出てくるボスを倒す。全十ステージのそれぞれで、独特の動きや攻撃をしてくるボスが売りのゲームだった。
「おお……すげえ」
後ろに立った一人のギャラリーが感嘆の声を漏らす。
芽衣のプレイスタイルは他の人とは違っていた。レバーで自機を動かしつつも攻撃はしない。いわゆる不殺プレイだった。
アクションゲームやロールプレイングゲームと異なり、シューティングゲームは敵を倒さなくてもどんどん進んでいく。ボスと対峙した時も、攻撃を避け続けていると勝手に自爆してくれるのだ。
ゲームセンターのゲームは客に金を使わせることが目的であるため、そういうふうに作られたゲームが多い。結果、芽衣のような特殊なプレイができてしまう。
これが彼女にとって何よりのストレス発散になっていた。
敵の撃ってくる弾をひたすら避ける。丸暗記した敵の出現位置とそこから自機を狙ってくる弾道を読み、避ける。当然ながら相手は同時に複数、時おり画面を埋め尽くすような数が出てくることもある。そこから更に放たれる無数の弾。誘導ミサイルのようなものもあれば、レーザーもある。それを避けきるのだ。
序盤の子供騙しみたいなステージでは物足りない。中盤からやっと楽しくなってくるが、それでも芽衣にとっては腹ごなしレベルだった。
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