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どこから出したのか、白いドレスの彼女は芽衣の頭に銃を向けたのだ。突然の出来事に悲鳴すらあげられずに固まる芽衣を見て、その女性は銃を構えたままゆっくりと寄ってくる。
「な、ど、どうして……」
「逃げようとなさるから、こうせざるを得ませんでしたことよ。操縦してくださいますわね?」
「こ……この状況で嫌って言えるわけ?」
「言うのは自由ですわ。その場合、またあのシミュレーションセンターであなたの代わりを探すことになるだけなのですから」
「だ、だったらそうしてよ。あたしは降りるから。その拳銃も見なかったことにしてあげる」
すると、彼女はため息をつきながら首を横に振った。
「残念ですわ。この日本という自治体において、今の私の行為は法を犯すことになるのですわよね? でしたら、一つやるも二つやるも同じこと。騒ぎになる前に、ここであなたの生命活動を停止せざるを得ませんことですわ」
「な、何それ。殺すって言いたいの? それってあたしに選択の余地がないってことじゃない」
「死亡したくないのでしたら、そうですわね」
脅しに使う日本語がおかしい。どこかの国のテロリストか。しかし、命の危険にさらされていることには間違いない。彼女のピンクの瞳は、それが本気だと物語っているからだ。
「……で、どうすりゃいいのよ」
「まず、これを着けてくださいませ」
彼女が自分の頭に着けていた輪っかのようなものを、芽衣の耳に装着する。
「な、何よ。これ……」
「私の声が聞こえますか?」
「聞こえるけど……何か、声のイントネーションがさっきと違うような。いきなり流暢になったの?」
「成功ですわね。ああ、すっきりしました。いつになってもこの翻訳機には慣れません。さあ、行きましょう。ああ……先に言っておきますが、逃げようとしたらその翻訳機が爆発しますので、ご注意くださいませ」
「なっ!」
耳から外そうとしたが、その輪っかはまったく動じなかった。接着されているわけでも固定されているわけでもないのに、なぜか外れない。
「無理に外そうとしても爆発しますわよ。その聴覚器官ごと外せば大丈夫ですが、ひどく激痛でしょう? それに、あなたの代わりを探すのはかなり困難なのでやめてくださいね」
「くっ……」
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