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「実はリュシーの両親が意識不明の状態で保護されて最近意識を取り戻した、これはもちろん知らないだろうな」
(知ってたらこんな風にならなかっただろうし)
「! 」
「その両親はどちらも敵対していた貴族の娘と息子である日書き置きとともに駆け落ちしたのだそうだ。そして追手をかいくぐり子供、つまりリュシー、お前を産んでこっそり育てていたと。けれどある日事故で意識不明で保護された身元不明者に、その行方不明の息子と娘がいたと分かって、その頃には駆け落ちされたために敵対関係じゃなくなっていたその貴族の両親が保護した。これが一年くらい前の話だ」
「!」
「それで息子達が目覚めたその貴族は大いに喜んだのだが、更に調べると孫がいたことがわかった。孫にまで逃げられててまるかということで、適当に貴族の嫁にしてしまえ、そうすれば逃げられないだろうと、要するにリュシーの両方の祖父母も画策した。ということでその相手を探していたが、そこで丁度銀髪令嬢を侍らして楽しんでいたダメ息子の俺がいて、都合がいいと白羽の矢が立ったというわけだ」
「ダメ息子って……」
このロランがダメ息子どころか狡猾な相手だとしか思えない僕は、突っ込みを入れてしまう。
それにロランが小さく笑って僕の耳元で、
「銀髪と見れば男も女も……特に女を口説きまわっていたからな。本当に何でこうなったのか。ああ……でも昔、市井に行かされた時に遊んだ子供が銀髪だったな。そう、確か六歳くらいの時リュシーのいる町で……なるほど」
(全部リュシーのせいか)
そう言われえばそんな事も昔会った様ななかったような気がする。
そう僕が思っていると、
「あった気がする」
「……運命だな。もう放さないよ、リュシー。正確には逃がさないだけれどね」
(逃がせるわけ無いだろう? 諦めろ)
この奇妙な偶然という心地よい幾つかの出来事が、僕の心を満たす。
まるで夢みたいだと僕は思った所で、おらんが僕に近づき僕はロランにキスされる。
それに僕がぽやんとして気持ちいなと思っていると、ロランの心の声が聞こえた。
(さて、ここまで話したし、そろそろ頂いてもいいよな?)
鬼畜な心の声が聞こえた僕はそのまま本気で逃げようとしたのだが、結局逃げきれなかったのだった。
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