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「これで二人目か。あの人は井戸を埋めた当事者だしな。しかし、大分育ったな」
また雅が呟いていた。穴の周りにはフェンスが立てられて、木の蓋がされるようになった。業者が呼ばれ埋め立てしようとしたのだが、いくら土を入れても埋める事は出来なかったという。
その後、学校では水に関わる事故が相次いだ。
プールの授業では命は助かったものの、三人の生徒が溺れていたし、いきなり水道の蛇口が壊れ水圧で蛇口が飛んで生徒の目に当たり失明した者がいた。
「やれやれ。暴れ出したな」
雅は何処か冷たい目で穴を見ていた。
学校では教職員が会議をし、お祓いをすることになる。
お祓いを依頼されたのは司の父・浩司だった。司の家は代々神主をしている。 雅の隣りの家と言うのは、由緒ある「御子神神社」だ。
学校が御子神神社にお祓いを依頼した夜、雅は浩司に呼ばれた。雅は浩司の居室に招き入れられていた。
「雅君。今日、学校の例の穴を見てきたよ。邪悪な気が感じ取れた。どうやら妖のようだが、違うかね?」
浩司は単刀直入に雅に訪ねた。
「うん、小父さんの言う通りさ。『水虎(すいこ)』の仕業だね」
雅も素直に答える。
「そうか。何故なんだ?」
浩司は何故、妖(あやかし)が騒いでいるのかを尋ねた。
雅は少し長い話しになる事を告げて話し始める。
「あそこには昔、井戸があったのさ。
その井戸は、あそこに学校が建つ前からあってね。村の連中は大切にしていたんだ。
それが戦後に水道が普及してきた。当時の水道の工事は民間が行っていて、請け負った業者は大きな利益を得ていたんだ。
だけどこの村ではあの井戸が豊富な水を提供していたから、高い金を払って水道など引く必要はないということになったらしい」
一度、雅は言葉を切ると窓を開けて一呼吸置いた。
涼しい風が部屋に入ってくる。
雅は冷たいお茶を頼み、そのお茶がやってくると一口飲んで話を続けた。
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