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梅花は小さくなって蹲っていた。
膝を抱え、口を一文字に引き結び、額を曲げた膝小僧にくっつけて、何も見ないように小さく蹲った。
梅花を覆うように、生まれてから一度も切ったことのない黒髪がだらりと垂れてきていた。
何故、そんな風に蹲っているのか。
それはここが知らない場所だからだった。
自分の身を守るように小さくなったのは、恐怖心からの行動である。
ここまでの経緯を一般的に見ると、『虐待されていた子供が優しい老女に保護された』という美談なのだが、梅花にとっては『母親に捨てられて何日か経ったと思えば、いつの間にか知らない場所にいた』なんて誘拐すれすれのことなのである。
いつの間にか…と梅花が思っているのは、老女に話しかけられた時空腹で意識が朦朧としていたため、記憶が曖昧で覚えていないからだ。
(帰りたい)
風呂に入れてもらい、温かなご飯を食べさせてもらっても、梅花は老女のことが信じられなかった。
『あんたは汚いから、ここから出たらすぐに連れてかれちゃうわ』
母親の言葉が洗脳のように染み込んでいた。
(お母さんの言う通りだった)
梅花は母親の言いつけを破ったことを後悔していた。
だがそのあとの母親の言葉を思い出し、梅花は救いの手が差し伸べられた気がした。
『私が迎えに行かないといけないの』
(お母さんが迎えに来てくれる?)
しかし、梅花は捨てられたのだ。
廃棄されたのだ。
ならば、迎えに来てくれないのでは。
(やっぱり、帰ろう)
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