プロローグ

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何故わたしはいきるのでしょう。 少女は、こてん、と首を傾げて目の前の男に問うた。 いきるということが、わからないから。 男は、唇を噛み締めていたが、優しく笑って少女に目線を合わせた。 少女から見れば驚くほどに長身なその男が、自分と目を合わせて言った、その言葉に少女は酷く不安になった。 いきるのに理由なんていらんだろ。 いらない、わけがないだろうに。 少女は苛つきをこめて男を睨みつける。 が、男はぐしゃぐしゃと少女のちいさな頭をかき混ぜるだけで、もう何も言わなかった。 それが、わたしが雷吾さんについて行く理由です。 梅花は、隠れた左目を押さえて気づかれないように、笑みをこぼした。
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