第一章

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明るい表通りは怖かった。誰かに見つかってしまったら、怒られるだろうから。だから暗い路地裏にうずくまっていた。 小さくなったら見つからないなんて本気で思っていたのだ。 結局、見つかってしまったが。 自分が孤独であることを知り、これからどうしようと、ぼんやり考える。 他人は怖い。 母以外の人を見たくもない。 だってみんな、母に纏わり付くから。 (だからお母さんはわたしを見ない。そうだよね?) ぶちっ、健気に咲いたタンポポは、梅花の手によって抜かれた。 土のついたそれを、遠くに放り捨てて梅花は立ち上がる。 汚れた自分の体を見て、やはり他人に見つかってはいけないと、自分を戒める。 母はいつも梅花に言っていた。 「ここから出ないでね。あんたは汚いから、ここから出たらすぐに連れてかれちゃうわ。」 そうなったら、私が迎えに行かないといけないの。 「わかるわね?」 私に迷惑かけないで。 「返事は?」 過去の母の声を思い出して、俯いて呟く。 「はい、わかっています……わたしは迷惑かけません。いい子にしています。外には出ません。話しかけられても逃げます。」 言いつけは守らなくては。 いい子にしていないといけない。 母が迎えに来てくれるように。 「どこにいよう。見つけてくれるところはどこだろう」 暗い、暗いせかい。 月も、星も見えなかった。 線路沿いの電灯は点滅しながらも必死に光っていた。 その周りには羽虫が群がる。 光が怖く感じた。 あれの近くにいれば、梅花の存在は影となって、すぐにわかってしまう。 梅花は幼い思考回路で、ただ見つからないために行動した。 ここが人通りの少ない場所であったことが幸いした。 梅花は朝になると建物の影に隠れた。 建物と建物の隙間などに身を潜めていれば、近くを人が通っても大抵気づかれない。 通行人の数が多ければ気付くものもいただろうが、ここを通るのは少ない上に自分のことに夢中になっている者ばかりだった。
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