episode167 虚実の隙間

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「おまえのこと……抱き締めてやろうと思っただけなのにっ……」 悪戯に内腿を這う手が 「……抱き締める?」 指をかけたままピタリ止まった。 「ああ……」 「どうして?」 見上げる 子供みたいな無垢で残酷な瞳。 「どうしてって……」 衝動と倦怠。 あともうひとつ 俺の人生にあるとしたら――。 「おまえが俺の弟だから」 それは この家で生きるには全く必要のない 家族愛という感傷的な愛情だ。
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