~・万金・~

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ゾッとしたのか寒気がしたのか、グリーンは座ると体をぶるるっと震わせ、目の前の熱燗をちびりちびりと飲みながらため息を吐いた。 「なんだかんだ言っても、たかがサソリのクセに国家規模なんだ。結構な待遇をされているんだろうな……」 酒が空きっ腹に染み渡ってきたらしく、うっすらと頬が明るくなってきた。 「毎日最高級のコオロギかなんかをもらって、サソリ付きの召使いがいて下にも置かない高待遇でさ……俺んとこなんて、あそこに新しい大型家電量販店ができたせいで……」 暗闇の方角を指差し、苛立ちを押さえ込むように喉を見せてのけ反り酒を飲み干していく。 「はっ……開店のでっけえ広告見たかよ?あんなとこに、何やったって勝てる気がしねえって。今なんて、本当に客はさっぱり。あ~あ……ついにとどめを刺されたってヤツかもな?ここ数年、必死に店にしがみついてたけど目の前が暗いったらないよ」 「ああ……わかる。うちだって金物屋なんて何年もやってるけど、今時なあ……息子なんて跡継ぐ気なんてねえし、『大概のものなんてホームセンターで買える』とかぬかしやがる」
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