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佐助くんが養子に入って、店長さん♪ それから、私が君のお嫁さんなって看板娘。こういう計画でどう?」
「なにをバカなこと言ってるんですか!」
まるでプロポーズされているみたいで、佐助はどぎまぎした。赤くなった顔を見られないように洗い場に汚れ物を置きに行く。蛇口からこぼれる夏の生温い水に手をひたしていつもの冷静さを取り戻す。水透に向き直ってできるだけそっけない口調で言う。
「ここに就職して、先輩に毎日いびられるのはごめんです。それより、僕は一度くらい一人暮らしをしてみたいので、県外の国立大学か調理師学校へ進もうと考えています」
水透は、「そっか」と呟いて仕事を再開する。少し、不満そうだった。
「ばか」
「え?」
「ううん、なんでもないよ。さあて、お店開けようか。今日は佐助くんが店内中心ね。私は真知子さんをバックアップするから」
水透は1分で8個の驚異的ペースでハンバーグをこね終え、大きく伸びをした。
3
思えば、夏が終わった頃から水透はおかしかった。
バイトに忙しいのは相変わらずだったが、それ以外にも休日になると頻繁に何処かへ遠出するようになった。火冴にも隠し事が多くなり、いつもそわそわしているような、落ち着きがないような。時折、自室で頬杖をついて考えこんでいる光景も見られた。火冴のいる前ではいつも通りのバカみたいな明るさを見せてはいたものの、彼女の快活さというものが2%ぐらい減少している。そんな風に感じていた。
そして、問題の、学期末試験の終わった日。
帰宅して制服を脱ぎ捨てるとすぐに、水透は外泊すると言ってどこかに消えてしまった。
それから二日後、水透は町はずれの人通りの少ない場所で倒れていたのを近隣の住民に発見された。即座に藤嬢家に連絡が届き、主治医に付き添われて屋敷へと運ばれた。
「で、今朝まで眠りっぱなしというわけ。全く、人騒がせなヤツよね」
火冴はムクれながら説明した。医院での診察を済ませ、二人は帰宅の途についていた。
診察の結果、頭蓋周辺その他には外傷も無く、脳波にも異常が見られないとのことだった。
「おそらく、一時的な記憶障害でしょうね」
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