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かなり俊敏な動きで蒼は女子生徒の右腕を掴んだ。
硬直した手は力加減を忘れ、女子生徒の表情は歪んだ。
「ご、ごめん!」
噛みそうになりながらいつものように動いてくれない口を動かし、蒼は言った。
嫌われたかもしれない。
今の蒼はその女子生徒に嫌われるのがかなり恐かった。
本当に、死にそうなぐらいに。
「……いいよ。気にしないで」
綺麗な笑顔で女子生徒は笑った。
蒼はその言葉と表情で倒れそうなほど安心した。
そこで久しぶりに呼吸をし、固まった全身の筋肉が若干柔らかくなった。
しかし、そろそろ女子を目の前にしているという単純な緊張にぶち当たっていることに蒼は気づいた。
「ふふ。もしかして緊張してる?」
その言葉で蒼は顔がめちゃくちゃ熱くなった。
何か言わないと、何か言わないと。
「緊張してくれるのは嬉しいけど、私にはそんなに気を使わなくていいよ」
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