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蒼が言葉を返す前に女子生徒が言った。
そして握った手に力が入り、女子生徒が立ち上がろうとしていることに気づき、蒼は腕に力を入れた。
細くて綺麗な手。
蒼には刃物のように見えたその手は、紛れも無く女の子の温かい手だった。
全部見透かされてる。
心の読み合いでは絶対に勝てない。
蒼は確信してしまった。
「私はね、転校生君が思ってくれてるほど、綺麗な人間じゃないよ。想像以上に気持ち悪い人間だと思う。だから、気を使わないで」
女子生徒は立ち上がり、蒼から手を離した。
言葉の意味を理解する前に、蒼は右手の寂しさに心が震えた。
居心地のいい手だった。
でも、自分の手は震えていた。
「私の名前は国松有紗。転校生君の名前は確か……北町蒼君……だっけ?」
「あってる」
有紗はニッコリと笑った。
「やった覚えてた。よろしくね、蒼君」
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