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「よろしく。国松さん」
有紗は今度、自分の右手で蒼の左手を握った。
「ど、どどどどうしたんだ!?」
あまりに急なことに蒼は拒絶反応のような驚き方をしていた。
「いいから。行きたいとこがあるの。連れてって」
「連れて行くって!? 俺が!? どこに!?」
「どこにって? んーとー……」
少し有紗は楽しそうだった。
しかし、物を運んだり、教室を移動したりと、生徒が沢山通るその場所で、二人で手を握り合っているのは、蒼には精神的負荷が大きかった。
そして……。
「じゃあ彼氏のとこ連れてって」
「え? …………彼氏のところ?」
その彼氏という言葉で、蒼の心は砕かれた。
そりゃそうだ、こんな綺麗な女子生徒に彼氏がいないわけが無い。
そう考えると、蒼はただただ暗い気持ちになった。
「うそうそ。私に彼氏なんていないよ。私に彼氏なんてできるわけないよ」
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