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夏用の制服を着ている男子生徒の名前は南森らすと。
二人に気づき、らすとは二人に近づいた。
「君転校生だよね。同じクラスになれて良かったよ」
「あんたは知ってる。南森だったよな」
「よく知ってるんだね。剣道部の部長だから?」
「おう。なあ勝負してくれよ」
蒼は緩んだ有紗の手を解き、らすとに近づいた。
靴下でも、床は足音を拾い、その音が止むと二人は目の前で向き合っていた。
「俺が勝ったら夏の大会には俺が出る。だから勝負してくれ」
有紗と話していた時とは違い、蒼は力強い本音をらすとにぶつけている。
睨むようにらすとの目を見るが、らすとの表情は変わらない。
「悪いけど。それはできない」
「……逃げんのかよ」
「何を言っても無駄だ」
「じゃあ俺は……もう剣道は引退なのか?」
真剣な蒼の目に、涙が溜まり始めた。
表情を変えないらすとを瞬きもせずに蒼は見続けるが、何も変わらなかった。
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