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再会
古い家が立ち並ぶ、路地のような細い道
縁日ではないのだが、町をにぎやかにしている
石畳の軽くのぼった細い道
懐かしいにおいが、癒してくれる
眼の前に、少女の姿。
(あれは?)
「ノリちゃん!ノリちゃんじゃないか!」
少女は振り向き、駆け足で去っていった。
(ノリちゃん…)
足もとを見ると、トランクがある。
誰かの忘れ物ではなさそうだ。
(誰も見えてないのか?)
そう、感じたのだ。
私が足元に置いたと思っているのか、
誰も気にしている様子はなかった。
持ち上げてみると、かなり重い。
(なんだろう?)
私は、旅館に持って帰ることにした。
この町は、私が住んでいた町だ。
ここは小さい、ひなびた温泉街。
家は、この川の上流にあった。
今では、ダムの底に眠っている。
ノリちゃんも、そこで眠っているはずなんだ。
(逢いにきてくれたのか、ノリちゃん)
重いカバンを畳においた。
開けてみると、札束が詰まっている。
その上に、手紙があった。
『お兄ちゃん、元気そうね。このお金、
町のために使って欲しいの。
お兄ちゃんと過ごした13年間。
無くしたくないから。よろしくね、
お兄ちゃん 典子』
(やっぱり、ノリちゃんだったんだ)
典子は、ダムの工事現場で死んだ。
高い崖となった工事現場で、転落した。
工事は一時中断したのだが、
ただの事故として処理された。
その時私は、修学旅行で、京都に行っていた。
帰ってくると、もうすでに、
骨になってしまった典子がいた。
典子とは幼なじみで、将来は結婚しようか?
などと考えていた。
典子にその気があったのか、それはもうわからない。
でも、こうして逢いに来てくれただけでも、
私は嬉しかった。
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