第5章―1

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 幸は目覚めるとまず日時を確認する。以前は携帯で確認していたが、玲子に持っていかれてしまってから、テレビを付けるようになっていた。  裕の朝は早い。そんなことは分かっていたが、もはや体自体がそのリズムから逃れられないようで、いつも朝の6時前には目覚めてしまう。テレビの画面でそんな早い時刻表示を見る度に恨めしくなって、二度寝をしてやろうと試してみたこともあったが、頑なに寝ることはできなかった。  きっとこれは裕の意地に違いない。そもそも裕は頑固なのだ。きっと裕に生活リズムを狂わすなと、体をもって示しているに違いない。  だからウダウダと朝の情報番組を見てしまう。灰皿を手元に置き、タバコをふかしながら頬杖をつく。オススメのグルメ情報や今流行の新スポットなんかの特集を見て、行きたくても行けないじゃないのなんて、くだを巻くのが関の山だ。  早起きは三文の得と言うが、全く実感できないでいた。いや、むしろ損した気持ちにさえなってしまう。それでも番組最後の本日の占いはチェックは欠かさない。外に出られもしないのに、運勢がいいと少しばかり嬉しくなるのはどうしてだろうか。
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