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*side スターチス
「何でもない顔じゃないよ」
「放っておいてくださ……」
勢いよく振り上げられた彼女の手を、僕は片手で掴んだ。
どうしてそうまでして強がるのかーー
頼ってくれて良いのに……
頼って欲しいのに……
「離してよっ」
再び振り上げられた、もう片方の腕も捕える。
「何するの、何でもないから放っておいてって……」
これ以上、ダリアの拒絶の言葉を聞きたくなくて、僕は彼女の唇を自分のそれで塞いだ。
「やっ……!」
必死に抵抗されたけれど、僕は彼女を離す気なんてない。
このまま……
そう思ったとき、僕の左足にもの凄い衝撃が走った。
「い、痛っ!」
思わず、ダリアを捕えていた手の力が緩む。
ダリアが、僕の足を踏みつけたのだと理解した時には、彼女は既に自室に逃げ込んだ後だった。
ご丁寧に、きっちり鍵まで掛けてーー
「ダリアちゃん、開けて。まだ……」
まだ、話が終わっていないのにーー
しかし、扉の向こうから返事は返ってこなかった。
しばらく経っても、彼女の部屋からは物音一つ聞こえない。
僕は諦めて、彼女の部屋の前を去った。
仕方が無い。
明日になってしまうが、きちんと自分の想いを伝えようーー
そう、決意して……
しかし、それは間違いだった。
翌日、彼女は店を辞めて、こつ然と姿を消したのだ。
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