2:仕事します

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*side スターチス 「何でもない顔じゃないよ」 「放っておいてくださ……」  勢いよく振り上げられた彼女の手を、僕は片手で掴んだ。  どうしてそうまでして強がるのかーー  頼ってくれて良いのに……  頼って欲しいのに…… 「離してよっ」  再び振り上げられた、もう片方の腕も捕える。 「何するの、何でもないから放っておいてって……」  これ以上、ダリアの拒絶の言葉を聞きたくなくて、僕は彼女の唇を自分のそれで塞いだ。 「やっ……!」  必死に抵抗されたけれど、僕は彼女を離す気なんてない。  このまま……  そう思ったとき、僕の左足にもの凄い衝撃が走った。 「い、痛っ!」  思わず、ダリアを捕えていた手の力が緩む。  ダリアが、僕の足を踏みつけたのだと理解した時には、彼女は既に自室に逃げ込んだ後だった。  ご丁寧に、きっちり鍵まで掛けてーー 「ダリアちゃん、開けて。まだ……」  まだ、話が終わっていないのにーー  しかし、扉の向こうから返事は返ってこなかった。  しばらく経っても、彼女の部屋からは物音一つ聞こえない。  僕は諦めて、彼女の部屋の前を去った。  仕方が無い。  明日になってしまうが、きちんと自分の想いを伝えようーー  そう、決意して……  しかし、それは間違いだった。  翌日、彼女は店を辞めて、こつ然と姿を消したのだ。
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