第1章

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 今朝。最近陶芸にハマった信にいは、田んぼの土がいい器の素材になると知り、農協から借りたシャベルカーでほったらしい。。  すると土からじわじわと石油がしみだしてきたらしい。  しかもその石油は純度がとても高く、そのまま車に入れても問題ないとか。  信にいのもとには某巨大商社の人間が飛んできて、年間ウン十億の契約で貸し出すことになったとのこと。  そこまでテレビを見た私は、壁にかけられた時計の存在に気づく。  結構な時間寝てしまったらしい。あと少しで信にいが来る時間ではないか。  簡易ベッドから飛び起きて、壁にかけてあったジャケットを着る。  私は病院に連れて行こうとする駅員を強引に振り切り、改札にむかって走った。  いた!いつも田んぼに出る時の青い作業着が今日は石油まみれになっていた。  私は信にいに飛びついた。 「本当にありがとう」  のぶにいの体から発している体臭とガソリンの匂いを胸いっぱいに吸い込む。  おそらく、着替える時間をも惜しんで、ここにきてくれたのだろう。本当にありがとう。 「それよりも早く、税務署いってこい」  信にいは私の胸にショルダーバックを押し付けてきた。  私は、うなずき走り出した。地下鉄に向かう途中、チラリと見えた時計台はちょうど16時をつけるチャイムが響いた。   「全部で一億あるから数えて!」  ショルダーバッグを机にたたきつける。  汗まみれで肩で息をしている私の形相に目を剥く税務署職員だったが、恐る恐るカバンをあけると、札束を取り出し機械にかけていく。  私はのろのろとその場をはなれ、椅子へかける。  ああなんて幸運なのだろう。  これはきっと天国にいるおとうさんとお母さんありがとう。生前はいろいろあったけど、すべて水に流してこれからも私一人で道場を守っていくからね……。  一筋の涙をこぼして両親の事を想っていた丁度そのとき、 「あのすいません……」  目をあけると先ほどの職員が私の前に立っていた。  嫌におろおろとした様子だが、もう数えるのがおわったのだろうか? 「なんでしょうか?」 眉をしかめて、職員に尋ねる? 「大変お伝えするのが心苦しいのですが……少々金額が足りないんです」 「え?」 「あと100円」  そういうと税務署職員は納税所を手渡してきた。急いで額面をみる。  『¥100000100」  一億円とんで100円。
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