何よりも、大切なもの

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「一億円、当てたの幸夫だよね」 誤算だった。 この男は幸夫の友人なのだから、その事実を知っていてもおかしくは無い。 さすがに、ストーカーがこの男だと想像するのは難かったけれど……それでも、一億円を手に入れてすぐ逃げ出せるくらいの準備は、整えておくべきだったんだ。 「幸夫は現金を君にプレゼントしたのかい? 何とも生々しくて斬新な、プレゼントセンスだね。 ……僕から奪ったお金だけでは、足りなかったの?」 「っ……ごめんなさいっ。あの時は本当に、それしか手段が無かったの……っ。 家族も病気で倒れて…」 「理沙さん、由美子から聞いたよ。 貴女、家族いないそうだね。うるさいからと、事故に見せ掛けて殺したんだってね」 くそっ……、由美子の奴……っ、私を裏切ったのねっ。 どこまで、由美子が私の事を和史くんに話したかわからないから、下手に口を開けなくなった。もうどう誤魔化すべきか良い案が浮かばなくて、内心ぎゅっと唇を噛む。 すると、私の心情を知ってか知らずか、和史くんが話を続けた。
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