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「っ──だってそうでしょ!?!?」
私は何も悪くない。
「お金はこの世の何よりも大切じゃない!!
それを奪って何が悪いのよ!!」
この世は競争社会で、弱肉強食。
学生時代は試験の合格不合格で他者を蹴落とし合い、社会人になれば仕事の質や会社内の成績で勝ち組負け組が出来上がる。
だったら、こんな勝ち方もありじゃない。
そうよ、何も間違っていない。
悪くない。私は何も悪くない。
「愛だの恋だの優しいだの包容力があるだのそれが何?
それでお腹いっぱいになるの?
一円でも得になるの?
何にもならないでしょ!!」
この世に、お金で手に入らないものは無い。
それなのに、由美子は馬鹿だ。
そして、今まで付き合って殺してきた男達も、皆馬鹿。
愛だの恋だのの幻想に惹かれて──でもそんな幻想を見せてあげたのだから、代わりにお金を頂いたっていいでしょ。
だから、この一億円も私のもの。
幸夫を半年間愛してあげた、対価というわけよ。
「なるほど、何よりも大切なもの……良い考え方だ」
しばらく押し黙っていた和史くんが、不意にそうぽつりと呟いた。
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