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「もういいよ」
胸に襲い掛かった、突然の衝撃。
私はその場に倒れ込んだ。
無意識にアタッシュケースに手を伸ばそうとしたけど、手はぴくりとも動かせなかった。
痛い。息が出来ない。苦しい。嫌だ。嫌だ。
せっかくあいつ等から、たくさん奪ったのに……私のお金っ、私の……っ。
嫌だ……死にたくない。
何度もぐるぐる、頭の中で唱え続けた。
霞む視界の中で、和史くんが、何でそんなに嫌そうな顔をしているの? と、首を傾げた。
最後に聞こえた和史くんの言葉が、鼓膜を震わせ……そして、意識は永遠に途絶えたのだった。
「だって理沙さん、──何よりも、お金が大切なんだよね」
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