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平日の昼下がり。
奥様方が日頃の鬱憤を晴らすべく集っている喫茶店の店内に、私と由美子はいた。
由美子は、唯一何でも話す事のできる、私の大親友だ。
集団から少し離れた席に二人、腰掛け、飲み物を口にしながら、ゆったりと語り合っていた。
「しっかし美咲、ホント運良いわねー。
一億円当たった上に、幸夫(ユキオ)くんってお金持ちなんでしょ?
羨ましー!」
「そうかな?」
「そうだよ! 私も美咲みたいに可愛くて、男のハートを射抜ける演技力があればなー」
ニヤニヤとからかうように言われて、ちょっと異論を唱えたくなる。
確かに、今まで過去十人以上の人と付き合ってきたけれど、由美子だって私に負けず劣らずのはず。
何より、演技力がどうのと言われたら、まるで私が悪い女みたいじゃないの!
「もうっ、だったら由美子も、そういう人とお付き合いすればいいじゃない。
今までお金持ちばかりだったのに、どうして?」
由美子の彼氏を、私は見たことがある──と言うか、私の彼氏──幸夫の、大学時代の友人だ。
名前は、和史(カズフミ)。
物腰柔らかで、優しそうで、うぶそうな男性だった。
幸夫を交えて数回食事をした事もあるが、その度私の食べたい物を優先してくれたり、私の好みに合わせた美味しい店を探して予約してくれたり、とにかく色々と気遣ってくれた。
由美子にその事を話すと、意外にも由美子は和史くんが気になると言い出し、紹介したところ、なんと付き合い始めたのだ。
もちろん事前に、由美子の性格を考慮して、お金持ちでは無いみたいだよ、って伝えていたのだけれども。
「背が高くて顔がかっこいい──っていうのはもちろんなんだけど、一番は優しさね! あと包容力!」
「由美子が優しさとか包容力とか言うようになるなんてねー」
クスクスと、思わず笑ってしまう。だって、内面を褒める言葉が飛び出してくるなんて、由美子が由美子じゃないみたいだから。
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