0人が本棚に入れています
本棚に追加
「私の話は終わりでいいでしょー?
それより、当たった一億円はもう手元にあるの?」
「ううん、まだ取りには行っていないよ」
「そっか。良かったねー美咲。
これで前々から言ってた、海外旅行行けるんじゃない?」
「いっそ移住しちゃおっかなー……この国も、色々と住みづらくなってきたし」
「ああ、美咲はストーカー問題もあるもんね」
こくりと、私は頭を縦に振る。
数日前から、名前も姿も不明な誰かに付き纏われていた。主に夜で、足音が聞こえて振り返っても、暗すぎて何者なのかがわからない。
ただでさえ、近頃は金銭に関連した傷害事件や殺人事件がニュースで目立ち、後を絶たないというのに。不安でいっぱいだ。
「美咲自身が気になってるのか、それとも一億円関係?」
「一億円の事、知ってるはずないでしょ、多分。
だから、好意で寄ってきてるか、あるいは……元彼?」
過去付き合った中の誰かだったら、凄く怖い。だって、良い別れ方をした覚えが無いから。
金銭面が主な原因で、でも別れてからは一度も連絡がきたり、もちろん送ったりもしてないけれど……。
「いっしょに行ってあげよっか?」
「大丈夫だよ、子どもじゃないんだから。それに、由美子は今日この後和史くんと会うんでしょ?」
「心配してあげてるんだから甘えなさいよー!
それじゃあ、もし何かあったら連絡してよ。すぐ駆け付けるしっ」
「わかった、ありがとう」
伝票を持って、席を立つ。
最初のコメントを投稿しよう!