何よりも、大切なもの

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「私の話は終わりでいいでしょー? それより、当たった一億円はもう手元にあるの?」 「ううん、まだ取りには行っていないよ」 「そっか。良かったねー美咲。 これで前々から言ってた、海外旅行行けるんじゃない?」 「いっそ移住しちゃおっかなー……この国も、色々と住みづらくなってきたし」 「ああ、美咲はストーカー問題もあるもんね」 こくりと、私は頭を縦に振る。 数日前から、名前も姿も不明な誰かに付き纏われていた。主に夜で、足音が聞こえて振り返っても、暗すぎて何者なのかがわからない。 ただでさえ、近頃は金銭に関連した傷害事件や殺人事件がニュースで目立ち、後を絶たないというのに。不安でいっぱいだ。 「美咲自身が気になってるのか、それとも一億円関係?」 「一億円の事、知ってるはずないでしょ、多分。 だから、好意で寄ってきてるか、あるいは……元彼?」 過去付き合った中の誰かだったら、凄く怖い。だって、良い別れ方をした覚えが無いから。 金銭面が主な原因で、でも別れてからは一度も連絡がきたり、もちろん送ったりもしてないけれど……。 「いっしょに行ってあげよっか?」 「大丈夫だよ、子どもじゃないんだから。それに、由美子は今日この後和史くんと会うんでしょ?」 「心配してあげてるんだから甘えなさいよー! それじゃあ、もし何かあったら連絡してよ。すぐ駆け付けるしっ」 「わかった、ありがとう」 伝票を持って、席を立つ。
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