第1章

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赤石徹は、学校から帰ると昨日と同じように自分の部屋に引きこもった。そして電気もつけずに、ランドセルを両手で抱え、テレビを付けた。 徹が部屋を出ないのは、2週間前からだ。徹には理由は知らされていないのだが、おそらくこのまま両親は離婚するのだろう。いらいらしている母親に、口を開けば怒鳴る父親、両親が一緒にいるところには、絶対にもういたくない、と自分の部屋からなるべく出ないようにしたのだった。 徹は、明日はミニバスの試合なのにな、と呟き、両親そろって試合の応援に来ていた時のことを思い出し、ランドセルに顔をうずめた。あんなに来てほしくなかったのにな、と涙を流す。 顔を上げると、テレビには宝くじのCMが流れていた。前後賞一億円!と騒いでいる芸能人を見ると、徹は心底腹が立った。それと同時に一億さえあればこの状況をなんとかできるんじゃないのか、と一億円という想像もできない金額に夢を膨らませ、妄想を加速させた。 世界だって救うことができるんじゃないのか、と。
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