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「もう一度、私にチャンスを頂けないでしょうか」
そう告げ頭を下げる悠人に、俺は何と言えばいいのか答えあぐねていた。
そこに柏木さんが戻ってきた。
ナイスタイミング。
嫌、もとはと言えば2人きりにしたこの人が悪いのだが。
「これが部屋のカードキーになります。今案内を呼んでおりますので」
そう言えば、鍵を取りに行ってくるとか言っていたが、さっき机に置いていたじゃないか。
なら、取りに行った鍵って?
「こちらが翡翠様のものになります」
柏木さんが手にしていたのは金色のカード。
これまた懐かしい。
なんでこう金持ち私立校って考えが似るんだろう。
金持ちだから仕方ないのか?
「翡翠様にも同じ教員寮に入って頂きます。こちらのキーは理事長専用になりますので、失くされない様になさってください」
え、あぁ、うん、そうだよね。
わかってはいたけど。
同じ寮か……。
ってか、俺、社長としての仕事もあるから、寮に住むとか……
「プレゼントだそうです。もう一度学校生活を楽しんでほしい、と」
あの隠居親父、今更なんですけど。
ま、これがあの人なりの優しさなのだろう。
この学園は、父さんが俺のために建ててくれたモノ。
きっといつかは俺に、と思っていたのだろう。
仕方ない。
大人しく受け取っておこう。
不器用な父さんの優しさを。
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