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彼との出会いは幼稚園の年長さん。
ふわふわで、くりくりで、女の子みたいな子犬。
『リク』と名付けたその子を連れて来たのは近所のお兄さん。
「めいっぱい可愛がってあげてね」
お兄さんは私の前髪をくしゃりと撫でて掻き上げると、静かにキスを落とした。
いつもそう。
彼は誰のおでこにもキスをする人だった。
誰にでも優しくて、誰にでも物をあげられる。
落ちているモノを拾う変な癖があって、拾ったものをよく私にくれた。
「大事にしてね」
そう言って。
私はそんなお兄さんが大好きで――――だからその言葉の通り、貰った物は全て大切に宝物箱にしまっている。
だけど初めてだ。
最初で最後。彼が、命あるものを拾ったのは。
「生きもの?お兄ちゃん、またひろったの?」
「凍え死んだら可哀想でしょ?こんなにくりくりで可愛らしいのに」
優しい笑みで、ふわふわの塊にキスをする。
「ずるい、わたしも」
私が手を伸ばすと、お兄さんは子どもっぽく笑ってリクを私の胸に近づけた。
見た目よりもゴワゴワで、思ったより重みのある、私よりもずっと温かい生き物。
潰してしまいそうで不安になりながらお兄さんの方を盗み見ると、恐々とリクを抱く私を彼は嬉しそうに見ていた。
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