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(あなたの一年を一億円で買います)
ネットでバイトを探していて俺が目に止まった件名がそれだった。
詳細情報はただ一言
(実際にお会いしてからお話しします)
それだけだった。
(場所は奈良県立常永大学前のレストラン「山風」って、俺の大学と同じじゃん!)
バイト内容がわからないことに抵抗があったものの待ち合わせ場所に安心感があった俺は今日の午後あってみることにした。
(赤いマフラーをして待っています)
そのメッセージに気づいたのはそれから五分後のことだった。
その日の授業は午前だけだったので、俺は真直ぐ待ち合わせの場所に向かった。着いたレストランの中で赤いマフラーをした人を見つけることに苦労しなかった。向かい合って座ると、まだ少女の面影が残る女だった。
「お待たせしてすいません。南 徒粟(とし)です。」
「はじめまして、南さん。依頼主の美島 雪音といいます。」
「出会って早々すいませんが、早速内容についてお聞かせしてもよろしいでしょうか?」
「内容は件名のままです。一年間私のそばにいて欲しいだけです。」
要するにバイト内容は彼女は俺を一年間一億円で雇うということだった。
「俺は一日どれくらいあなたのそばにいればよいのでしょうか?」
「別にこれといった基準はございませんが、私が心細くない程度に。」
「それって下手したらトイレと風呂と寝る以外ってことになりますよね?」
「そこまでは自分でもわかりません。なのでも嫌なら、断ってもかまいません。」
「・・・明日まででいいので少し考えさせてください。」
「あまり時間がないので、明日までには必ず。」
「ええ、わかりました。」
結局、俺はそのバイトを受けることにした。しかしそれから一週間は彼女からの連絡がなかった。不安になった俺は教えてもらったメールアドレスで彼女にメールを送った。すると二分も経たないうちに返信がきた。
(今そちらに向かってます。)
それだけだった。しかしその内容だけで俺は驚いた。
「ちょっ!いきなり家にくるとかどんな思考してんだよ。」
慌てた俺は部屋着から他人に見られて恥ずかしくない程度の服に着替え寝癖を直して歯を磨いた。もともと部屋は散らかってなかったので、掃除をしない分楽だった。
《ピンポーン》
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