第1章

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「徒粟さん。いつもこんなに豪華なんですか?」 リビングから戻った雪音は夕食を見て驚いた。 「いや今日は雪音さんの引越し祝いだから、久しぶりに腕をふるったんですよ。口に合うことを願っています。」 「合います合います。すごく美味しいです。」 「まだなんも食べてませんよね?」 「すでに食べた未来の自分が言っているんです。」 この会話のテンションは食後まで続き、食べ終わる頃には食事の開始から二時間も経過していた。 「あっ、もうこんな時間か。雪音さん、もう風呂入ってるから先入ってください。タオルは風呂の前の引き出しにありますから。」 食器洗いを急いでしながら俺はテレビを見ている雪音の後ろ姿にいった。 しかし雪音からはなんの返事もない。もしかしてと思い、顔を伺ってみると、案の定心地よい寝息を立てていた。 彼女を起こさないように寝室に運んだ俺は風呂に入って、布団に潜り込んでこれからの事を考えながら眠った。 「徒粟さん。デートに行きましょう。」 なんの前触れもなくいきなり雪音はそう言った。雪音と一緒に住み始めて2ヶ月が過ぎようとしていた。しかし、その2ヶ月の間にお互いの大学仲間を誘っていろんなことをしてきたが二人きりで出かける事になったのはこれが初めてだった。 「また唐突に提案してきましたね。」 「1度行ってみたいところがたくさんあるんです。」 「いつも通りみんなと行けばいいじゃないか?」 「私は徒粟さんと行きたいんです。」 「俺としか行きたくないと?」 「はい。デートですから。」 「まぁ、仕方ないか・・・。それで、いつ行きますか?」 「今日ですよ。当たり前じゃありませんか。」 「唐突な提案にして唐突な内容。これからはせめて前日に言うようにしてください。」 「わかりました。」 この日を境に大学仲間たちを誘って遊ぶ回数よりも雪音と二人きりで出かける機会が多くなった。 その中でも心に残ったのは奈良県平群町の水口神社に行った時だった。いつもならデートらしいところに行ってるのにその日は神社参拝だという事に大きな印象を受けたからだ。
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