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雪音はそのままエレベーターで5階まで行った。
《5階 外科 内科》
エレベーターのボタンの横にある案内板にはそう書いてあった。
俺は1階の受付で待つことにした。なぜなら5階まで行って雪音がどっちの科に行っているのか突き止めようとしたがバレる可能性が高かったので、何か他の手はないかと考えていると受付で科に分かれて会計することを思い出したからだ。待つこと30分、彼女がエレベーターから降りてきた。その日は僕たち大学生にとっては夏休みでも9月の平日だったので空いていた。そのせいかすぐに雪音の名前が受付から呼ばれた。
彼女が止まった受付の前の科は《外科》だった。
雪音が病院から出てきたのを確認すると僕は一足先に自宅に帰った。
その10分後彼女が帰ってきた。雪音はこのとき俺がリビングにでもいると思ったのだろう。そのまま廊下で
「ただいま」
というとそのまま自分の寝室へと入っていった。でもそこに俺がいた。雪音はびっくりして立ちすくんでしまった。俺は雪音に近づき、
「おかえり。」
と言いながら頭を撫でた。このときの僕は少しいたずらっ子だったのかもしれない。雪音の緊張が最大になった時をみはからって声をかけたのだから。「た、ただいま。」
なぜか2度目のただいま。俺はなぜか笑ってしまった。それにつられて雪音も笑う。
さて、緊張が緩んだところで本題に入ろう。
「少し話そうか?雪音」
その後の話は思った以上にスムーズに進んだ。どうやら雪音は途中で僕が後を追っていることに気づいていたらしい。
彼女は病気だったのだ。それも女性特有の癌、《子宮癌》に。次に俺はなんでこんなバイトを依頼したのか聞いた。
「雪音、なんでこんなバイトを依頼したんだ?この1年という期間も病気に関係があるのか。」
俺はこの時知りたかった。自分の知らない彼女の秘密と、そしてそれを知った自分にできることを。
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