第1章

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「私が病気だとわかったのは徒粟と会う1ヶ月前だった。元々体が弱かった私は学校にもろくに行けない病棟生活の毎日。それでもみんなに負けないために病院で家庭教師を雇い努力した。そして今年の春、憧れの常永大に入学して新しい生活を送れると信じていた。でもその1週間後私は体調を崩しそのまま病院に搬送され、その時わかったの。私が癌になっていることに。」 僕は彼女の話すことすべてを最後まで聞いた。 彼女がこうして外で生活できるのがあと6ヶ月。つまり俺と出会ってから1年後には病棟生活になるということだった。バイト代の1億円はというと俺と一緒だった。親の遺産だった。 すべてを言い終えた彼女の顔には少しだけ笑顔が戻ったように俺には思えた。 「私は徒粟にたくさんの嘘をつこうとした。」 「そうなのか?」 「一緒に住む期間が1年というのもむりかもしれない。今日の検査で病棟生活になるのが1ヶ月早まりそうなの。1億円も払えなさそう。思ったより医療・・費の負担・・・が重く、多くても8千万円・・・・しか払えそうにないし。」 「そうか。」 その時初めて気がづいた。彼女の目に涙が浮かんでいることを。 「でもほんと・・は嘘を・・・つきたくなかった。だってっっっ!!」 その時、俺は必死で涙を堪えようとした雪音を抱きしめた。両親を亡くしたとき涙を堪えようと強く望めば望むほど涙が溢れてくる自分と重なったからだ。 「あっ、あの徒粟!!」 「・・・頼っていいからな。苦しい時は頼っていいから。」 いつの間にか俺も泣いていた。 「・・・・うん」 雪音は微かにそう言った。 それから5分経ったのか、10分経ったのか、互いに落ち着きを取り戻した俺と雪音はベットに座って話した。 「雪音。」 静かに発した俺の声に雪音はいつものあの愛くるしい笑顔で答えてくれた。 「願いは願うだけじゃダメなんだ。待っているだけでは願いは叶わない。自ら拾いに行くことなんだ。」
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