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雪音は黙って僕の言っていることを聞いてくれた。
「俺はこれからも雪音と一緒にいたい。本当にそう思っている。でも今は君と一緒に住むことはできない。」
雪音はもちろんなんでと言おうとした。でもわざと雪音の口から言葉が出る前に次の言葉を言った。
「その代わり、君のために生きる。僕の時間のすべてを使って。これからしばらくは直接君に会える時間は今以上に減るし、外に出る事すら制限されるかもしれない。・・・でも約束する。」
一呼吸置いて俺は静かにそして力強く言った。
「雪音の目指して、見ている場所に、そばに、君がこれから望んでいるすべてのところに俺がいるから。・・・それにまたこうして君と暮らしたいから。」
《4ヶ月後》
俺は相変わらずあの春のバイトを続けていた。でもあの頃のバイトの数より2つ増えた。変わったのはそれと彼女が引っ越したことぐらいだった。
奈良県立新名病院(にいなびょういん)の318号室が今の雪音の寝室だった。そこに今日も俺は行く。
「雪音。」
「こんにちは、徒粟。今日は随分と早いですね。」
「授業が早く終わったんだ。それに今日は積もる予定だから早く来たんだ。」
「わあ、初雪?」
「そういう事になるな。」
いつもこんな他愛もない話が病室の一室で行われ、時がゆっくりと過ぎていく。雪音の容態は悪くも良くもならないが僕は必ず治る事を祈っている。
(雪音と幸せに生きれる事を)
そう願った直後、窓の外に小さな明かりが現れた事に雪音はもちろんの事、俺さえも気づかなかった。
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